長井敏哉
nagai toshiya 長井敏哉 株式会社池松機工 代表取締役社長 https://ikematsukikou.jp/

現在の仕事についた経緯

高校を卒業し地元の企業に就職しましたが、買って一年も経たない愛車を自損事故で廃車。ローンだけが残り、支払いに追われる日々で、これでは払っていけないと会社を辞めることを決意しました。そして20歳で名古屋へ出稼ぎに行き、半年で借金を返済しました。
その後、熊本に帰り仕事を探しましたが、コンビニで無料でもらえる求人案内を見る毎日が続いていました。そんな時、ふと目に留まった小さな町工場の求人情報。面接を希望し原付で向かったところ工場が狭く古くて驚きました。
面接をしてくれた社長の目がギラギラしていて怖かったのですが、その場で即内定。自分のことも何も知らないのに「幾らほしいか?」と聞かれ更に驚きました。咄嗟に「20万」と言ったら本当に20万円でした笑。
これが今の会社(仕事)との出会いです。私を育てて頂いた、八年前に亡くなられた創業者(面接してくれた社長)には感謝しかありません。

仕事へのこだわり

モノづくりにおいて大切なことは、常に発想しながら考えて仕事をすることだと思っています。毎日毎日同じ仕事をしていても、少しでも時間を縮める努力をするのとしないのとでは最終的に大きな差が生まれてきます。ただ私自身も新人時代は考える余裕はなく、早く先輩社員に追いつくようにと体だけバタバタしていたように思います。

しかし、何事でも継続しているうちに「慣れ」というものが発生します。「慣れ」は心の余裕をもたらします。その心の余裕も2通りあると思っています。
先ず一つ目は悪い方の慣れ。心の余裕により見落としや確認漏れのポカミスを引き起こします。いわゆるヒューマンエラーというものです。心の余裕が油断になってはいけないのです。
一方、良い方の慣れは、体は自然と動き、頭で様々なことを考えられる時間が生まれます。それが良い発想を生み、効率改善や事故防止に繋がっていきます。仕事だけではありません。挨拶一つとっても、心の余裕の有無により全く違った挨拶になるものです。
新人で何も解らない時は必死でもがいても良いと思います。私もそうでした。最初から頭だけで効率や改善ばかり考えていても良い発想は生まれません。先ずは仕事の内容をよく理解し、継続することで職場環境に馴染んでいくことが最優先ではないかと思います。そして「慣れ」が生まれた時、仕事の効率化や職場環境改善などに取り組んでいければよいと思います。

それから仕事は一人では決して出来ないものです。一緒に働く上司や部下、仲間への気遣いや思いやり、感謝の気持ちが自分自身への信用信頼へ繋がっていきます。
今や指導する立場になりましたが常に実行していることを紹介します。それは、指導の言葉を発する前に「3秒」考えることです。言いたい言葉が変わります。特に部下に対し「かぁーっと」なった時は有効です。母から教わった「3秒ルール」、職場でも家庭でも是非お試しあれ。

「SDGs」についての取り組み・考えなど

弊社でのSDGsの取り組みは何と言っても【マイSDGsカード】です。
もちろんSDGsについての会社の目標はあります。ただ、そこを重要視していません。
全ての従業員へ【マイSDGsカード】を発行し、自分なりの目標や行動指針を記載し目標達成に向けて取り組んでもらっています。会社の目標を重視しても、個人では努力の成果が判りにくいですからね。

SDGsは目標を立てることが目的ではないですから、自分なりの目標を持たせることで行動しやすく達成感も味わえます。尚、自分で立てた目標を各部門の朝礼等で発言する社員が出てきて、それがきっかけで全部門で【マイSDGsカード】宣言が起きました。
自分の目標を周りに知ってもらうことで達成意欲も湧くものです。どんな目標でも決して否定することなく賛同するという良い流れが出てきてると感じています。
各個人の取り組みも様々で非常に面白い内容もありました。「土日は主夫になる」とか「ペットの散歩の時にゴミ拾いをする」とか「家庭内でのジェンダー平等」とか。一番多かったのは「エコバックを持ち歩く」だったと思います。

与えられた目標より自分で決めた目標は常に達成感が得られ継続的な行動に繋がります。各個人の目標達成の進捗状況は年度末の個人面談で聞いてみたいと思います。そして会社で宣言している3項目についても振り返りを行い、目標達成できるよう努力していきます。
尚、SDGsとは相反する戦争や紛争が一日も早く終息することを願っています。大きな自然災害で貴重な人命が奪われる現在で、争いによりお互いの大切な家族の命が奪われている。国にとっては小さな命かもしれませんが、家族にとってはたった一つの命です。世界の平和な社会を取り戻すことがSDGsの取り組みより先に思えてなりません。

若者へのメッセージ

私もこれまで様々な失敗を繰り返してきました。決して胸を張って生きてこれたかというとそうではないと思っています。
人は誰しも失敗をするものです。失敗をしない人などいません。いるとすれば、自分の失敗に気付かない悲しい人生を送っている人だと思います。
よく聞く言葉で「失敗を恐れず挑戦しよう」とありますが、失敗を恐れない人もいません。ただ、失敗を恐れないコツはあります。
私が何かに挑戦する時、いつも思うことがあります。それは「失敗しても命を取られることはない」と考えることです。もちろん命を懸けての挑戦は出来るだけ避けてほしいところですが…。

そして失敗したら必ず原因を見つけることです。それも前向きな気持ちで見つけること。落ち込んで後ろ向きな気持ちでは本来の原因にはたどり着かないことが多いからです。
また、一人で解決出来ないことは、勇気を出して周りの人に相談することです。その勇気が出せれば、人の支えを有難く感じ、次は必ず支える側になれます。
他人に自分の弱さを見せることも周りとの信頼を築く第一歩だと思います。人の支えに感謝し、何でも挑戦できる幸せな人生を目指して努力してほしいと思います。