ネットベンチャーの中国法人での、システムエンジニア、プロジェクトマネジャー、総経理(最高執行責任者)などを経て、2012年にLooopへ入社。
太陽光発電所のEPC事業、太陽光、風力発電による発電事業の事業本部長・管掌取締役、電力小売事業、経営戦略、財務戦略部門の管掌取締役を経て、2023年4月より現職。
私は2005年頃から約6年間、中国上海市で仕事をしていました。上海では現地の日本人同士が週末に集まりフットサルを楽しんでおり、そのメンバーの中には現在私が代表を務める株式会社Looopの創業者である中村もいました。Looopには中村からの誘いで入社することになりましたが、エネルギー業界に知見や経験がなかったため、すぐに入社を決断できませんでした。
その後、中村から何度か誘いを受け、2011年12月に幕張メッセで開催された展示会に見学に来るよう言われました。業界を知る良い機会と思い展示会に行ってみると、なんと私の名刺が「セールスマネジャー」という肩書で用意されており、展示ブースの担当者は私がその肩書で展示会場の来場者対応を行うものと考えていました。こうして私は展示会を手伝うことになり、その流れでLooopに入社することになりました。
Looopに入社した当時は社員が5名程度でしたが、13年後の現在では約300名に増え、売上高も500億円規模に成長しています。この成長の中で、私は営業、調達、企画、管理など様々な職種を経験し、2023年4月に代表取締役社長に就任しました。
私の仕事へのこだわりは、ステークホルダーとの信頼関係を構築することにあります。同僚、取引先、お客様など、仕事に関わるすべての人々との信頼関係がなければ、仕事をスムーズに進めることはできませんし、何より仕事を楽しむことができません。
信頼関係を築くためには、約束を守ることが重要です。これは、提供する製品やサービスの品質を保証すること、適切な価格設定を行うこと、社内外の仕事の期限を守ることなどが含まれます。約束を守るには、自分の役割に対する責任感と貢献の意識が欠かせません。
また、ステークホルダーから信頼を得るためには、プロとしての仕事が求められます。自分の知見や経験がどうであれ、給料をもらって仕事をする以上、プロフェッショナルとしての姿勢が必要です。このプロフェッショナリズムを維持するためには、常に研鑽を積む意識が必要だと思っています。
そして、信頼関係を構築するには、言葉だけではなく行動が伴わなければなりません。口で言うだけでなく、実際に行動することで初めて信頼は生まれます。行動し続けなければ約束も守れず、プロとしての仕事も遂行できません。
私は、若手の頃から意識的に、あるいは無意識にこういった仕事へのこだわりを実行してきたと思っています。しかし、現在の組織のリーダーという立場では、自分が実行するだけでは十分ではなく、組織全体にこの仕事へのこだわりを実行してもらう必要があります。しかし、これは容易なことではありません。自分が実行することと他人に実行してもらうことには大きな違いがあり、特に多くの人々に実行してもらうことは一層困難です。
今期、Looopでは、企業のバリューを改めて見直すと共に自分事化してもらう取り組みを行っています。Looopの新たなバリューは「仲間を尊重する」「当事者意識を持つ」「挑戦を繰り返す」「顧客起点で考える」「理想から逆算する」です。いずれも、私の仕事へのこだわりである「ステークホルダーとの信頼関係の構築」と整合するバリューだと感じています。今後は、このバリューを浸透させていくことが、組織が私の仕事へのこだわりを理解することにつながると思っています。
リーダーとは、「実行し、実行させる」人です。今後も、私自身が仕事へのこだわりを実行し続けると共に、組織全体が同じこだわりを持って動いていけるように努力していきます。
Looopは、再生可能エネルギーの普及によるエネルギーフリー社会の実現を目指している会社です。Looopの事業は、SDGs(持続可能な開発目標)の中でも特に「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」(目標7)、「気候変動に具体的な対策を」(目標13)に直球で応えるものと考えています。このように、私たちの事業が成長することと、SDGsの目標を達成することは直接つながっているため、特別な取り組みを行っているとは考えていません。私たちの事業を持続的に成長させることが、SDGsの目標達成に向けた最善で最大の貢献だと信じています。
SDGsは17の目標は、それぞれ独立して存在しているように捉えられがちですが、実際はそれぞれが密接に関係していると思っています。1つの目標だけを意識すれば良いというものではありません。
Looopの再生可能エネルギー普及に関わる事業は、「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」(目標7)と「気候変動に具体的な対策を」(目標13)に直球で応えるものですが、実際に再生可能エネルギーを社会実装するには、電力の供給側だけでなく需要側を考えながら電力システム全体を見据える必要があります。これは、「産業と技術革新の基盤をつくろう」(目標9)という目標達成にもつながります。
さらに、再生可能エネルギーの発電所が地域に受け入れられるようにするには、「住み続けられる街づくりを」(目標11)という目標を意識する必要があります。また、太陽光パネルの廃棄問題などは、「つくる責任つかう責任」(目標12)とも関連しています。再生可能エネルギー普及に関わる事業で解決できる社会課題は1つではなく、SDGsの複数の目標の達成に貢献できる事業とも言えます。
SDGsの目標達成に向けた取り組みは重要であり称賛されるべきものですが、その取り組みが解決する社会課題を限定しすぎることには注意が必要だと感じます。それぞれの目標の相関関係を理解することが重要です。どの事業者も「自社の担当領域はここなので、この目標は関係ない」といったように社会課題を部分最適で考えるのではなく、SDGsの17の目標全てを考慮し、全ての目標を達成しようと貢献する全体最適の意識が必要だと思います。
「バタフライエフェクト」という言葉を知っていますか。「ブラジルで蝶が羽ばたくと、テキサスで竜巻が起こる」という比喩的な表現で説明されることがありますが、これは小さな原因が大きな影響を及ぼす可能性があることを示しています。皆さんの一つ一つの行動も同様のことが言えます。皆さんの行動が周りの人々や社会に影響を与え、その影響が大きな変化へと波及することもあるのです。
皆さんは周りの人々や社会から切り離された独立した存在ではありません。「つながり」を意識し、自分自身の行動が与える影響を広範囲に考えることが重要です。また、その影響を時間的に長く考え、今の行動が未来にどのような影響を与えるかという長期目線を持つことも重要です。
長期目線を持つことは簡単ではありませんが、「死んだ後のこと」を考えることは、長期目線を持つ一助になるかもしれません。企業における振る舞いで言えば、「企業を辞めた後のこと」を考えることとも言えます。アルフレッド・ノーベルが、自らの死亡を伝える誤った新聞記事を目にしたとき、自らが「死の商人」と非難されていたことから、世の中のためになることをしなければならないと、私財を投じてノーベル賞を創設したのは有名な話です。ノーベルは偶然にも自身が死んだ後のことを知る機会がありましたが、通常はそのような機会はありません。しかし、意識的に「死んだ後のこと」を考えることで、ノーベルのように長期的な目線に立った行動ができるかもしれません。
少し回りくどくなりましたが、私からの皆さんへのメッセージをまとめると、「行動せよ。そして、自らの行動の影響を範囲的に広く、時間的に長く考えよ。」ということです。皆さんの行動が世界を、そして未来の世界をより良くすることにつながると信じています。