茂木健一郎
Mogi Kenichiro 茂木健一郎 脳科学者 http://qualia-manifesto.com/research.html

Profile略歴

1962年生まれ。東京都出身。東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理科系研究科物理学専攻課程終了。脳科学者/理学博士。「クオリア」をキーワードとして、脳と心の関係について研究を行う。著書「脳と仮想」(新潮社)で小林秀雄賞受賞。ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー、慶應義塾大学特別研究教授。

これまでのキャリアにおけるターニングポイント

私が脳の研究を始めたのは生物物理の分野で博士号を取った後、30歳くらいからでした。実は私、脳科学会から追放状態になった過去があるのです。クオリア(例えば「赤の赤い感じ」や「水の冷たい感じ」など意識の中で感じる様々な質感のこと)について学会で発表した時のことでした。脳科学の世界には医者が多く、皆がスーツで並んでいる面前に私が立ち、スピーチしました。そして「あなたたちのやり方は間違っている」のような発表をしたものですから、周囲から揶揄されました。発表内容も非常に過激な内容だったからでしょう。そうした反発を受ける中で、東大の名誉教授の恩師、伊藤正男先生は私を認めてくださいました。世の中には伊藤先生のように私を支持してくださるような方もいれば、そうではない方もいる。さまざまな意見があるのは当然のことです。しかし、その時に思ったのは、「孤立してもいいから自分の信じることを言おう」ということ。34歳の若手研究者だった頃の話です。それから、ちょっと生意気な若者は大切にしてあげようと思い直すようになりました。

今後取り組んでいきたいこと

脳科学、特に意識の問題について本質的な発見をすることと同時に、日本の良いところを世界に伝えていく人になりたいです。既にそうした活動を少しずつ続けていますが、まだ足りないと感じています。例えば、CNNやBBC、Netflixを視聴して「もじゃもじゃ頭の脳科学者が日本の良いところを教えてくれる」「この人の話を聞くと日本に行きたくなる」のようなイメージに近づいていければ良いと思っています。これまで日本人は自国や自分たちの自己紹介をしてこなかった。そう感じているからこその活動です。日本の多様性を自ら発信していくことは、私のライフワークとして今後もやり続けたい仕事ですね。

若者へのメッセージ

人生は失敗しないと先に進めないんです。失敗を恐れずに、むしろなるべく早く失敗して、受け身の取り方を覚えた方がいいです。失敗して受け身を取って、また立ち上がって前に進んでいく。そうすれば、人生の素晴らしい果実をたくさん手に入れることができます。