駒田博紀
komada hiroki 駒田博紀 Yellow Monkey Brewing 株式会社 創業者 兼 代表取締役 https://yellowmonkeybrewing.com/

Profile略歴

1977年、東京都大田区生まれ。小児喘息に苦しみ、スポーツと無縁の少年時代を送る。中学校に入り、空手を学び始める。法政大学法学部卒業後、司法浪人を経て、スイス系商社DKSHジャパン株式会社でセールスとマーケティングを経験。
2013年1月、スイスのスポーツブランド「On(オン)」の日本上陸プロジェクトに携わったことで、最も嫌いなスポーツであったランニングを始める。2015年5月、Onの日本法人「オン・ジャパン株式会社」を立ち上げ、Sales & Marketing Directorとして参画。2020年3月より同社代表。2024年2月、同社退職。
2024年5月、横浜市都筑区にYellow Monkey Brewing醸造所兼タップルームをオープン。現在はランニングやトライアスロンをライフスタイルとして楽しみ、走った後のビールをこよなく愛している。空手は準師範の腕前。
著書に「なぜ、Onを履くと心にポッと火が灯るのか」(幻冬舎)がある。雑誌ビギン(世界文化社)で「アクティブ超人コマダ 大人の仮入部」を連載中。あだ名は。“ハマのダンディズム”。

現在の仕事についた経緯

Onの仕事に関わることになり、嫌々ながら走ることになった2013年1月のことです。はじめて10kmを超える距離を走りました。そのランニングから戻り、シャワーを浴びて冷蔵庫を開けたとき、たまたま買っておいた1本のクラフトビールが目に入りました。それを飲んだときのおいしさは、今でもよく覚えています。
それまでの僕にとってビールというものは、会社の愚痴や上司の悪口を言うために、同僚と「とりあえず」頼む飲み物に過ぎませんでした。ですが、あのビールはそうではなかった。たとえ小さくとも、自分の挑戦や達成を祝福する一杯でした。
あのビールの味をまた知りたい、そう思いながら僕は仕事を続けてきました。Onの仕事を引退した僕が、次の仕事としてクラフトビールを選んだのは自然なことだったと思います。

仕事へのこだわり

2015年5月にOnジャパンを立ち上げて以来、僕は仕事とプライベートの境目を限りなく曖昧にして生きてきました。文字通り知名度ゼロのスポーツブランドを、日本におけるトップブランドにするという不可能に思える仕事を、僕のような凡人がやり切るためには、おそらく魂を賭ける必要があったからです。
そのように生きていると、「仕事へのこだわり」というものは、そのまま「生き方」となっていきました。仕事とは人生の一部であり、仕事におけるこだわりというのは、僕自身の人生における信念と同一のものになっていったからです。その上で、僕の仕事へのこだわり、すなわち人生における信念とは、このようなものです。これは、今も変わりません。

・自分自身を信じ、尊重し、愛すること。それができてはじめて、仲間やコミュニティを愛することができる。
・問題が起きたときでも慌てず騒がず、深く一度呼吸をして心の平穏を保つこと。
・怖がってもいい。不安になってもいい。その恐怖や不安に真っ直ぐに向き合い、「それでは俺はどうしたいんだ?」と自問自答する勇気を持つこと。
・一度決断したのなら、心穏やかに、心に決めたことを淡々と積み重ねること。
・自分に無いものを数えることをやめ、いま持っているものや、それをもたらしてくれた人たちに深く感謝すること。
・率直に、透明に、できる限り誠実に人に接すること。接する相手によって、言葉を変えないこと。
・まずは行動すること。自らの行動を通じて自分自身を鼓舞し、それがいつか人の魂に火を灯すと信じること。
・誰かが決めた常識や枠組みを鵜呑みにせず、「こうあるべき」という固定観念や同調圧力から離れてみること。
・自由な遊び心と少々の反骨心を持って、信じた道を力強く、堂々と進むこと。

「SDGs」についての取り組み・考えなど

SDGsとは、単なるマーケティング的なお題目では意味がありません。日々の行動や経済活動に直結した上で、しかもそれが苦痛でなく、楽しいものでなければ続きません。
僕はクラフトビールにおける「クラフト」とは、「手作り」という意味を越えて、「人と人の繋がり」を意味するものと考えています。それが具体的な形として現れるとき、自然とSDGsの考え方に近づくように感じています。
まだYellow Monkey Brewingは醸造すら開始していない立ち上がったばかりのブルワリーですが、醸造がスタートしたならば、下記のような取り組みを行うことを決めています。

・熱海のダイダイ農家や、小田原市のレモン農家とパートナーシップを結び、廃棄されてしまうはずの不揃い、あるいは傷のある果物を使ったビールの醸造を定期的に行おうと考えています。
・ビールの醸造過程で排出される「モルト粕」は栄養価が高いのですが、通常であれば産業廃棄物として廃棄されてしまいます。このモルト粕を地元の養鶏農家に引き取っていただき、鶏の飼育に役立てていただこうと考えています。これにより、Yellow Monkey Brewingは産業廃棄物としてモルト粕を捨てる費用を節約でき、養鶏農家は飼料購入費を軽減でき、さらに全体的に見ればゴミの排出量も減らすことができます。
・このモルト粕を使用した「クラフトビールペーパー」を作っている会社とパートナーシップを結び、社員の名刺やビールのパッケージのダンボールなどに、これを使用します。

若者へのメッセージ

大人のように見える人でも、実は迷いながら生きているものです。僕は今46歳ですが、「46歳の自分」を生きるのは初めてです。これまで生きてきた中で、自分なりの信念や生き方の「型」のようなものは持っていますが、それでも迷うことは多々あります。
その意味で、皆さんと全く同じです。だから、アドバイスを送るというより、共に楽しみながら生きていけたらと思っています。そして、いつかご縁があり出会うことがあったなら、スポーツとビールを楽しみながら、皆さんのお話を聞けたら嬉しいですね。