畠山琢磨
hatakeyama takuma 畠山琢磨 Pilz株式会社 代表取締役 https://pilz-corp.com/

Profile略歴

東北大学大学院農学研究科入学と同時に、農事組合法人アグリピースにて就農。椎茸生産のノウハウを学び、2016年に株式会社はたけ設立。生産の効率化を図るため、2019年にPilz株式会社を設立。地域資源の循環による新しい価値を展開中。

現在の仕事についた経緯

農家の家系で、冬期間の収入確保のため、父親の代から生しいたけの生産を始めました。夕食を食べ終わってからもハウスに出向いたり、ハウス内で就寝したりと、忙しい姿を見てきました。いきいきと働いている背中を見て、将来自分も農業をしたいと思うようになりました。
大学院では農業経営経済学を専攻し、学術的側面から農業経営を学びました。就農後、産地として拡大する中、使用済み菌床ブロックの処理が問題となってきました。幼少期に見た、畑に置いた廃棄菌床の山からカブトムシが湧き出て、周りに草が生い茂っていた光景を思い出し、地域問題の解決を事業化できると考えました。

仕事へのこだわり

椎茸で世界一、カブトムシで世界一を目指して、共感できる仲間と共に日々取り組んでおります。
椎茸生産においては、100%秋田県産材にこだわり、材料の広葉樹を調達してきています。特にその内60%程は地元横手市の山から切り出されています。また、地下50mからの深層水を使用して、最適な菌床作りに役立てています。米所秋田県の県南地域は多数の酒蔵が存在し、水が豊富で美味しいです。
菌床を徹底した温度と湿度で管理することで、抜群に引き締まった、風味のある椎茸が完成します。生椎茸の出荷の9割程は市場への出荷になりますが、その中でも、選抜された美人どころを自社ブランド【鱗花~りんか~】として、全国へお届けしています。
良い椎茸を見分けるポイントとして鱗皮の立ち具合があります。鱗皮とは椎茸の傘にある白いヒダのことで、これがしっかり立っていると鮮度の良い身の引き締まった椎茸であると言えます。そのような椎茸は真上から見ると花のように綺麗に見えるため、鱗花という名前を付けました。色白で甘みがあるのが特徴で、秋田美人を連想させる音の響きもこだわりです。農産物の品評会で、日本最高峰の賞である農林水産大臣賞を目指して日々精進しております。
ヘラクレスオオカブトムシをはじめ、40種類以上のカブトムシ、クワガタムシを10,000頭以上飼育繁殖しております。特にヘラクレスは世界最長のカブトムシで、愛好家やブリーダーが多数存在する人気の高い種類になります。ギネス記録も存在し、その長さを競って日々飼育に工夫を凝らしています。カブトムシにも「血統」なるものがありますので、その作出者になるために交配を繰り返します。世界一を目指して好きな昆虫をお世話できることはとてもやりがいがあります。

「SDGs」についての取り組み・考えなど

大学院時代の論文テーマで、一事業体の持続発展的な可能性の条件を研究しておりました。瞬間風速的な利益より、持続可能な継続をしていくための要因を探り、ヒアリングも含め、定量的な分析を行いました。コスト削減や経営資源の最適配置等、経営をスマートにしていく中で、ごく当たり前の「無駄なく」の考え方が基本にあるのだなと改めて気づかされました。
それから数年がたち、「SDGs」というキーワード、考え方が提唱されました。これはまさしく、ロスを最小限にし持続可能な社会を作るという目標であって、自分が目指してきたものと重なりました。
私たちは原材料を地元産にこだわり、椎茸の生産を行っております。本来であれば廃棄物として捨てられる廃棄菌床も、昆虫の餌として資源化し、新しいカブトムシ・クワガタムシというコンテンツに繋げることができました。ゴミが視点を変えたら資源になったのです。
また、飼育過程で排出されるフンは「ヘラクレス堆肥」となり、昆虫由来の有機肥料へと昇華します。他の家畜由来の堆肥と比べても施肥成分があり、野菜や果物の生産に有効であることが分かりました。近隣の農家さんに提供することで、化学肥料の代替を目指してもらっています。今では、ほうれん草、小松菜、アスパラガス、キュウリ、りんご、トウモロコシ、ブドウ等、様々な農産物に使用されています。このような栽培で成った農産物を「ヘラクレスベジタブル」とし、環境に配慮した野菜ブランドとして展開中です。
同じ価格、同じ質で棚に並んでいるときに、ヘラクレスベジタブルを手にしてもらえる社会になること、持続可能な考え方が一般消費にまで広がる社会こそ、目指さなければいけない未来だと感じております。

若者へのメッセージ

物心両面の持続可能性を追求していく過程で、事業ではひょんな事から点と点が繋がり出すことがあります。そのため、そのような発想の土壌は常に耕しておく必要があり、それは正常な思考からのみ産まれるものだと思っています。
生命工学の分野において、命の目的とは「個で生き延びて種で繁栄すること」とされています。人類として持続的に繁栄していくことが私たちに課せられた使命でありますので、常にそういった意識を持ち続けることで、ユニークなアイデアが生まれるものかなと思います。
また、本当に大切なものは所有できないということを理解すること、日常のごくありふれた風景に感謝できるような心の持ち方を意識することで、自分の可能性を最大限に引き出すことができると考えております。
先人達の幾多の失敗の上に今の繁栄が成り立っています。当たり前と思わずに、常にチャレンジし続けることが恩返しとなり次の世代へと繋がっていくのではないでしょうか。死ぬわけではありませんので、恐れずに、自分にできることをできるだけ、立ち向かってみましょう。